クロノ・クロス

本当に好きな作品のひとつで，折に触れて話に出す作品です．しかしその一方で，やや人にお勧めしづらい気持ちが強いという，いささか奇異な立ち位置の作品です．

「やや人にお勧めしづらい気持ちが強い」という言葉をもう少し補うと，「この作品よりも，前作のクロノ・トリガーの方がお勧めしやすい」というところでしょうか．その理由は，以下2つの数年前に書いた感想文に述べてあります（ここでないインターネットのどこかに，今でも残っているかもしれません）．文面はいずれもほぼ当時のままです．

（某質問サイトにて，「おすすめのゲームを教えて下さい」という質問に対する返事として）

あなたがゲームに何を求めているかによって返事が変わるのですが，指定がないので私のエゴに基づく，とても抽象的な紹介をします．

「クロノ・クロス」．かの有名なクロノ・トリガーの続編に当たりますが，その評価は残念なものでした．トリガーの続編を期待した人ほど，その思いは強かったのではないでしょうか．というのも，戦闘システム，ストーリー，ゲームの雰囲気のどれを取っても，トリガーの面影が残るどころか，意図的にその影響を抹殺しようとさえ思えるような構成だったからです．

しかし，だからこそ私はクロスのほうを勧めたい．トリガーという物語が，答えることを放棄してしまった質問に対して，トリガーの引き写しではなく，むしろトリガーのやり方じゃダメだったんだと，親である前作へ反抗する形でこたえようとしている作品だと見なしているからです．

トリガーという親なくしてはありえなかった子供です．客観的に見れば，できの悪い悪ガキなのでしょう．でも，その子供には，間違いなく親にはない何かがある．トリガーを模範的に真似たならば，決して生まれなかっただろう魅力を持ったゲームです．

あとキッドみたいな快活な女の子が私は大好きです．

（ひみつの，といってもたいしたひみつではない場所にて）

シナリオが非常に難解なことで知られる本作であるが，主たる理由を挙げるだけでも一苦労である．それらの要因をある程度俯瞰できるようになってはじめてシナリオそのものを楽しめるようになってくるフシはあるので，初見時は開き直って雰囲気だけを楽しみ，ストーリーについて長考しないほうが良い．雰囲気ゲーとして楽しむだけでも遊ぶ価値のあるゲームだと思っている．キッドかわいいとか愛でてるだけで1周終わらせることはできるから大丈夫…たぶん．

各所で言及されていることであるが，本作は「トリガー2」を期待してプレイした人の期待を裏切ったのも事実である．トリガーで登場した街・国などはほとんど登場せず，クロスではじめて登場する概念が多い．更に多少のネタバレを覚悟で言えば，前作の登場人物が ほぼxxxx，またはxxxx になっている（注：当時はここに重大なネタバレを書いていました）．特にトリガーの世界を深く愛していた人ほど，クロスの世界設定には受け入れがたいものがあったと思われる．

しかしながら，製作陣が述べているように本作はそもそも「トリガー2」を目指してはおらず，もう一つの「クロノ」を作ろうとして作られた．クロノシリーズの名前を冠してこそいるが， 「トリガー2」という名前にだけは決して成り得なかった作品 である．

• このようになった最大の理由は，「トリガー」が答を放棄した(と捉えられる)点を物語の根幹に据えていることであろう．その点で，「トリガー」は確かに「クロス」の親であったし，筆者個人は「トリガー」なしには「クロス」はありえなかったと思っている．決して，「トリガー」を軽んじたからあのような作品になったのでは ない ということを強調しておきたい．寧ろ，「トリガー」という親を下手に踏襲せず，真摯に向き合った結果が「クロス」に他ならない．
  • しかしながら，「クロス」が唯一の続編のあり方だとまた断じるつもりもない．寧ろ，そのように断ずる可能性を排除することで，様々な可能性が 交差 する場所に成り立っている作品が「クロス」なのだろう．
• 「トリガー」の大成功を踏まえれば，その世界観を無難に踏襲するだけでそれなり以上に評価を得られる作品となったであろう．しかしながら敢えてそれをせず，「トリガー」には出来なかった，しかし「クロノ」シリーズでなければ出来なかったことを試みた制作スタッフには頭がさがる．このような作品を作れたら…と憧憬を抱きたくなる．

シナリオ以外の部分に関しても簡単に述べておきたい．

• バトルに関しては「どこにでもあるシステム」ではないが，酷く複雑というわけでもないので，理解できずに詰む可能性は低いと思われる．しかしながら特に中盤のボス戦は敵味方の属性，デバフなどをよく考えて立ち回らないと敵の攻撃で一撃死することもあるバランスになっており，丸ボタン連打で済む程ではない．

  • が，後半になると味方の物理攻撃が非常に強くなるので，結局丸ボタン連打で済んでしまうところが悲しい．

• 登場キャラクターが非常に多く，プレイアブルキャラだけでなんと45名に到達する．正直多すぎる上，その全員がストーリーに深く絡むわけではない．が，大抵の場合自分が気に入ったキャラを使い倒す(ことができる)ので，酷く気になる程でもない．

• 音楽は筆者が述べるまでもない．理論値に近いと思う．

万人受けするであろう「トリガー」とは異なり，非常に人を選ぶ作品なのは間違いない．しかし(だからこそ？)，紹介文を書いてみたくなった．プレイして見返す中で，その複雑な物語を理解し，前作との対応に気づく，ということを繰り返しているうちにドハマりしていくタイプのゲームであるような気がする．気になった人が少しでも触ってもらえると冥利に尽きる．

ラジカル・ドリーマーズ・エディション

2022 年にリマスター版が発売されたので，発売当日に休暇をとって遊びました．あまりとりとめのない感じになりますが，いくつか感想を列挙しておくことにします．

まずリマスターが出たこと自体はとても嬉しかったです．PS1の実機とPSVitaのゲームアーカイブス以外で遊ぶ手段が断たれていた本作を，現行機で遊べるようになったのです．数年前から「トリガーをあれだけリメイクしているのだから，いい加減クロスにも陽の光を当ててほしい」とずっと思っていたので，その願いが叶って本当に嬉しかったです．

数年ぶりに遊ぶにあたって，以前の遊び方と変えるかどうか大変迷いました．一通り遊んだことがあれば分かる通り，このゲームはこまかな分岐が多く，分岐に応じて誰を仲間にできるかが変わります．また，バトルメンバーの選定の自由度も大変高いです．結局次のようにすることにしました．

一般的な話

• 1周目からアルティマニアの参照は自由に行う．
  • 結末は知っているのですから，ネタバレもへったくれもないわけですし…
  • 数年前はクリア後にアルティマニアを買ったものの，結局それを参照して遊ぶことはしませんでした．なので色々と知らないことが多かったです．
• キッドならびにツクヨミの起用はできるだけ抑える．
  • 数年前に遊んだときはキッド・ツクヨミがずっとバトルメンバーにいました．なので自由枠が実質1名となっていて，あまり他のメンバーの様子を見ることは少なかったのです．
  • やや実用的な話をすれば，ヤマネコ編でツクヨミを起用すると，先天属性が黒のキャラが2人になります．滅びの塔で苦労しますね．

ルート選びの詳細

• A風鳴きの岬でキッドを仲間に加えない．
  • 実は以前のプレイでは毎回加えていました．というわけで，レナを仲間に加えてストーリーを進めたのは初めてです．
  • なぜだかよくわからないのですが，レナの腕力がポシュルと同等まで成長してしまっていて，前半の物理火力源になっていました．
• A蛇骨館潜入はピエールルート．
  • 単にピエールルートを遊んだことがなかったので．
  • 数年前に「劇場の剣」を拾ったときに，「誰が使うんだこれ？」と思ったのをよく覚えています．
• Aガルドーブでキッドを見捨てない．
  • ここは数年前から変えていません．ラズリーをどうしても仲間にしたいからです．はい．
  • すまないグレン．
• H水龍の島はロゼッタ死亡ルート．
  • ロゼッタ生存ルートは見たことがあったので．
  • ラズリーは氷の息を受け取ってすぐ復帰するわけですが，姉の死に立ち会ってなお旅を続けるのは心の強さゆえか，それとも悲しみに向き合う時間稼ぎなのか，どちらなんでしょうね．
• 星の子はツクヨミ離脱前に仲間にする．
  • ツクヨミ離脱時の星の子との会話を自分のプレイで見たことがなかったので，これは今回見てみたかった，という次第です．
  • 改めて見直してみると，「ここでツクヨミがパーティーアウトしたのだ」というのがぱっとは気づけないイベントなんですね．
• Hマブーレは復興する．
  • 放置するメリットがまったくないですし，復興イベントは普通に好きです．
• 星の塔突入前にキッドは起こす．
  • さすがに寝かせたままというのも，なんだかなあということで．
  • 2周めを遊ぶ時間が取れそうだったら，一切仲間にせず進めてみるのも面白そうですが．

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