齋藤正彦「線型代数入門」

線型代数の本と言ったらこれを挙げる人も多いでしょう.中身およびその評価については Amazon カスタマーレビューにいくらでも書いてあると思うので,ここでは個人的な思い出話しかしません.そういうのが苦手なひとはブラウザバックしてください.


数学をある程度本腰入れて勉強し始めた私が,「数学の勉強の仕方」をある程度きちんとつかめたのは,この本を読む過程においてであった,と言って良いと思っています.

大学に入学した当初は,経済学部に進学しようとしていました.経済学のことはほとんど何も知らなかったけれど数学をそれなりに使うということだけは知っていました.高校時代に文系だったので,理系に比べて数学にビハインドがあることも自覚していました.行列を計算するのも,不定形極限をロピタルの定理で計算するのも,はじめてやったのは大学に入ったあとのことです.

そんなわけで,数学はいつかきちんと勉強しようと思っていたのです.もともと数学はそこまで嫌いでもありませんでしたし.

そんな中,予備校時代に知り合った方が数学の勉強会をしているというので,ご一緒させてもらうことにしました.ひとりでやるよりは捗るだろうと.結論から言えば,捗りました.

ですが,最初はほんとうに辛かったのを覚えています.

発表をすると,「本ではこういうふうに書いてあるけど,なんで?」「これがこのように変形できる理由は?」「この定理の前提にこう書いてあるけど,この前提を落とした場合の反例は?」等々,大学数学に慣れている人からすれば当たり前の質問をたくさんされ,ろくに答えられませんでした.高校数学とは全く異なる力の入れ方が必要なんだということはなんとなくわかったものの,どうすればいいかよくわからず,喫茶店で本とにらめっこしていた記憶があります.

それが何回か続いたあたりで,(とりあえず主観として)自分の数学の理解力のなさに対して頭にきたので,発表担当の箇所に書いてある定義や定理,およびその証明を,いったん自分の発表資料に写経してみました.その上で,喋ろうとする内容(というか,原稿)を全部資料に書いてみることにしました.そうすると,意外と資料を書く手が止まり,中々思うように書き進められず,けっこうな時間を取られました.そうやって資料を用意したその回は,多少まともな発表ができた,ような気がします.

記憶が曖昧なのですが,たぶんこのあたりで,「自分がわかっていることとわかっていないことの区別をつける」ことができるようになりはじめたのだと思います.

ところでその当時の資料を今見ると,写経すらちゃんとできていませんでした.ということに気づけるようになっただけ,私も成長したのかもしれません.


ところで,この話と直接は関係ないのですが,高校生時代に文系を選んだ理由を聞かれることがあります.いくつかあって,


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